第一章

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同日同時刻。 遙達がいる所とは少し離れた王宮から、一人の女性が出て来た。 日の光に照らされて美しく光る銀色の長い、微かにウェーブがかった髪を後ろに流している。瞳は深い青色で、白い肌と組み合わせて非常に魅力的な容貌をしている。彼女を見た男達はもちろん、女でさえ魅了させるほどの美貌を持ち、微笑を浮かべていた。 彼女の名前は夜ヶ谷流風(ヤガタニルカ)。夜ヶ谷家の長女で、今や女性の憧れの的となっている。 夜ヶ谷家というのは、ここ南朱国で皇族の次に権力を持っている貴族である。実際には、皇族よりも権力を持っていると言えなくもない。 また、南朱国だけでなく、東蒼(トウソウ)国、西紫(セイシ)国、北白(ホッハク)国においても、かなりの影響力を持っている。 そんな大貴族の長女でありながら、決して権力に溺れることはなく、むしろそれを利用して弱者のために動いているのが流風だ。特に男尊女卑が未だに残っている社会を変えようと、女性の地位拡大を目指しているため、女性からの支持は非常に厚い。 今では夜ヶ谷家で当主の次に権力を持つまでになり、女性ながら次期当主候補に名を連ねている。 今王宮から出て来たのも夜ヶ谷家代表として国政の会議に出席し、話し合いを終えたためである。 聡明で国民のことを常に考えている彼女は皇帝からの信頼も得ている。 「流風様!お疲れ様です!」 王宮警護の兵士達が流風を見た途端に顔を赤らめながら敬礼し、流風が通り過ぎるのを見つめている。 流風は挨拶をする兵士達一人一人に微笑みかけながら王宮を後にした。 門まで来ると、そこには馬車が待っていた。馬の隣には、爽やかな感じの少年が立っている。少年は流風が来たのに気付くと、流風の方に駆け寄って来た。 「お疲れ様、姉さん」 「待たせたかしら?光」 光と呼ばれた少年はにっこりと流風に笑いかけた。
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