第一章

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この少年は夜ヶ谷光(ヤガタニヒカリ)。流風の弟で、黒髪、黒目を持ち、姉とは全く似ておらず、美しいというよりは、かっこいいと表せられるような好感が持てる少年である。 光は馬車の扉を開けると、流風を振り返った。 「全然。姉さんを待つのなんて苦にならないしね」 「そう、良かったわ。この後はどこへ?」 「玄人さんから南部署に直行するように連絡があったんだ。待たせてるみたいだから、急ぐよ」 「分かったわ」 流風が光に手を借りて馬車に乗り込み、光は姉が腰掛けたのを確認すると扉をきちんと閉めた。 銀色の大門が鈍く光っている。その置くには壮大に聳え立つ大きな塔のような建物があった。ここはリアリストの南部署。 その門の前に馬車が停止した。その中から、光が降り、その後に光の手を取りながら流風が降りた。 二人は門の前に立っている門番に敬礼されたので、軽く会釈してから門の中央に付いている識別機器に指紋と音声、そして顔の識別を受けると、ゆっくりと鈍い音を立てながら門が開く。 二人はその置くへと入って行った。建物の中に入ると、受付にいた女性がスッと立ち上がり、二人の方に近付いて来た。そして、女性は軽く頭を下げてから、事務的に話始める。 「流風様、光様、お待ちしておりました。玄人様の所までご案内致します」 二人は女性に案内されて部屋に通された。室内には既に20才くらいの眼鏡を掛けた男性がソファに深く腰かけていた。彼の名は法条玄人(ホウジョウクロト)。リアリストでは『蝶』の取り次ぎ役を担っている人物である。『蝶』のお目付け役でもある彼は、『蝶』の任務の第一選定をするメンバーの一人でもある。そして、流風も第一選定メンバーの一員だった。 彼は流風達の姿を見ると、立ち上がって恭しく礼をした。 「お待ちしておりました、流風様。急に呼び出してしまい申し訳ございません」 「いいえ。玄人さんこそ、わざわざこちらまで足を運ばせてしまい、申し訳ないですわ」
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