卒業

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主審の始め! 掛け声と共に俺と小島は蹲踞の姿勢からすっと立ち上がり向かい合ったと同時に気合いの掛け声をお互いに出した。 と同時に俺は一気に後ろに下がった! 普通はつばぜりあいから打ち込み合うのが常だがそんな事したら相手の方が一枚も二枚も上手に決まってる。 そこで俺が取った作戦はこうだ! とにかく打ち合える距離を徹底的に外す事だった。 しかし、気合いの声だけはいっちょ前に出す。 そして逃げる。 回りから見たらさぞ滑稽に見えたに違いない。 やがて笑い声が聞こえ始めたのに気付いた。 俺はしめたと思っていた! 最初は俺の無様な立ち回りに笑っていたと相手は思っていたはずだ。 俺は中濱の一件以来恥をかくのなんか慣れっこだし的屋の手伝いでも笑われたり野次られるのにも馴れている。 しかし、相手はどうだろう? 今まで脚光を浴びてきたエリート剣士はどうだろう? 褒められはしても恥を書くなんて!ましてや公式戦でだ! 更にギャラリーから小島早く決めちゃえよと言う言葉まで飛び出した! 奴の構えが明らかに乱れ始めてる事に俺は気付いた! これを見てくれてるスポーツやってる学生にメッセージが有る! 若い内の恥と場数は度胸を付けるのに最適だがや!
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