プロローグ

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「……三木さん。 お電話です。 神村純さんという方からです」 微かに向こうの音が聞き取り穴から聞こえた。 魔と融合している純の体は常人の感覚神経を遥かに凌駕している。 だから聞こえたのだ。直ぐに、女性から男性に変わった。 「お客様のおかけになりました電話番号は、現在使われておりません」 「いやいやいや、お前の空港の窓口にかけたのにそれはないだろ」 電話しながら、純は空いていた方の手を小刻みに左右に振った。 「フランスまでのチケットが欲しいんだけどさ、エコノミーでも何でも良いから職権乱用で取ってくれないかな?」 純はニコニコと笑う。 「はあ、何でお前の為なんかに」 「――揉み消したみたいだけど、あの時のハイ・ジャック。 確か僕が居たからだよね。 検閲の手を抜いて、そんでやっちゃったんだもん。 そいつが今は主任になってる」 公表しても良いんだよ、クス。 「………… 待て。 解った、チケットくらいなら流してやるから。 確かビジネスの席が少し空いていたな、うん。 よし、シャンパンも二本サービスしよう。 ――だから誰にも言うなよ!」 了解、と純が言う。 それきり、電話を切った。
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