46人が本棚に入れています
本棚に追加
ネバー・ウィン
「取った!」
「はっ、遅え遅え」
水月の刀での攻撃を口で白刃取りしてブラットフォートが言う。
さっきから、何度も何度も本気で打ち込んでいるのに、丸腰のブラットフォートにただの一発も入らない。
そして、水月の攻撃を回避や白刃取りで流しながら、何度も指で触れてくる。
つまりは、ブラットフォートに指で触れられた回数だけ、水月は実戦なら攻撃を入れられた事を意味する。
力の差が有り過ぎる。
ブラットフォートとの距離が遠過ぎる。
距離的な距離ではなく、強さの距離が。
「どうした?
俺様の5%でこれか?
こんなんじゃ、葉月に追い付くのは一生かかっても無理だな。
先ずは、基本的な所から色々修正してやらなきゃ、か。
一旦休憩にしようか」
ブラットフォートが指で水月の喉を突いた。
呼吸が乱れ、水月が玄霧を落とす。
「――ッホ、エホ」
咳き込んだ。
「ああ楽しい。
手加減して左手だけで相手するってのは」
ミネラル・ウォーター入りのペットボトルを手に、ブラットフォートは高らかに言った。
水月からしてみれば嫌味にしか感じられないが、それが事実なのだから仕方ない。
「嫌味ですか?」
「ああ。
最近の奴等はレベルが低いねえ」
最初のコメントを投稿しよう!