69人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
朔夜から軍艦島の場所を聞いたのは既に昨日の事となっていた。
夜も明け、陽が昇っている。
フェイクの嫌いな太陽だ。
一応昨晩は最寄りの一軒家に泊まった。
フェイクが自分や部下の為に幾つか買い取っておいた安物の物件。
知らない人間から見ればただの小屋だが、知っている者にとっては中々の休息所となる。
食料、寝具は勿論あるし、武器もある。
国家権力に追跡されると、近くの店に寄って弾薬の補充などが困難になる時があるのだ。
そういう時はこういった場所に行き、ほとぼりが冷めるまでは立て籠る。
フェイク自身もまさか、自分が使う事になるとは思ってもみなかったが。
玄関を上がるとキッチン。
右手に洗面所とトイレ。
それにバスルーム。
真っ直ぐ進めば寝具と武器庫を兼ねた部屋。
必要最小限の設備だけを整えた物件である。
フェイクは一睡もしていない。
いや、逆に眠るという行為は時間の無駄だとさえ思っている。
ダ・ヴィンチは、時間がもったいないと言い、眠らなかったそうだ。
フェイクもこの考えに賛同している。
昨晩、ひたすら準備に明け暮れていた。
銃や剣の整備、ひたすらに魔力の補給。
最初のコメントを投稿しよう!