プロローグ

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カティアの拳の風圧で窓が軋んだ。 フロストの回避の動作で、フェイクの髪がひらりとなびく。 「辞めて、もらえないかな? この場所が、壊れてしまう」 フェイクが2人に殺気を飛ばす。 こんな化物じみた2人が息を呑み、嫌な汗を流さずにはいられない。 そんな禍々しく、おぞましい負の空気。 「り……了解」 「解ったわ」 2人はほぼ同時に、声を震わせながら言った。 フェイクはすって窓辺のグラインドから外を見る。 「さて、足は手に入れたし、あと小一時間でもしたら合流地点にでも向かおうかな」 端的に言った。       ◆ 銀鏡詢怜は平然と飾り気のない廊下を歩いていた。 フォルシオの話では、やはり一定のポイントに1人ずつ配置し、あらゆる戦況に対応出来るようにするらしい。 そして詢怜も、その事に異論はない。 これが一番堅実な手法だと、自分も思ったからだ。 「ん? 甘い、香り?」 鼻につんとくる特殊な香り。 場違いにも程がある。 「何をやっている薬女」 天井に、女性が1人はりついていた。 先程銀鏡詢怜と口論を繰り広げた悪女、セレン=ルナその人。 油っこい黒髪をだらりと垂れ下げた今の姿勢は、ホラーその物だ。
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