プロローグ

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「やっぱり、どういう訳か効かないのね。 私の薬」 体をくるりと反転させて、音もなく綺麗に着地した。 落下の衝撃など微塵も感じていないかのように。 「お前の攻撃全てが俺には効かないよ。 何なら試してみる? まあ、無駄だろうけど」 「シスコンのくせに……」 ルナは、勝てないという事実に対して言葉の刃を突き刺す。 これなら当たる当たらないの問題はない。 「誰がシスコンだ!? 薬大好きのレズビアン女にそんな事言われたくないね」 「あら、そんな事言うのね。 アンタは女性に対する対応がなってないんわ。 デリカシーがないのかしら」 ルナは詢怜の前に立ち、拳を握り込んだ。 顔面を狙い、思い切り振り切る。 詢怜の顔を、ルナの拳が直撃した。 その拳の衝撃だけで、上の天井から吊るすタイプの電灯が揺れた。 だが、殴られた詢怜は微動だにしない。 セレン=ルナは不動の大きな岩を殴っているような錯覚を覚えた。 とてつもなく固く、そして動かす事が出来ない。 「肉体強化、かしら? だから薬も効かない。 重さと固さの新陳代謝の強化」 「さあ、どうだろう。 推理してみなよ」 詢怜は、眼鏡を上げた。
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