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もしこれが普通に暮らしてきていた人間ならば、気付かなくても無理はない。
足音を殺すだけでバレずに背後に回り込める。
しかし、水月ですら気付けなかった。
反応出来なかった。
横に雪花もいたというのに。
極限の修羅場、時間を過ごした事のある水月と雪花に足音も気配も悟らせずに接近するという事は、並外れた事だ。
どんなに気配を殺していても、水月は第六感が働く筈なのである。
だが、それすらも働かなかった。
「気付かなかった、ね。
私も。
流石はアリス」
「アリス?」
「あの子の名前。
アリス=ルーレ」
雪花は先程の金髪の少女の事を知っているようだった。
「知ってるの?」
「うん。
だって、あのフェイクのナイトメアでKを名乗ってる子だよ。
慟哭の人形師、アリス=ルーレ。
相手を自分の体に触れさせる事なく勝利する、と言われてる子」
見た目は儚げな少女だ。
だが、その少女に秘められたるは未知なる力。
あの年齢でナイトメアのKを名乗る。
ナイトメアの階級が、単に年功序列や適性で決められていない証拠だ。
ナイトメアの序列はあくまで強さの順だ。
年齢は関係ない。
強ければ上に立ち、弱ければ下なのだ。
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