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そう、ここは研究所。
私はここで産まれ、育った。
母…父…産まれたものにはかならずいる人物も、私にはいない。
父母とは呼べないが、私を育ててくれる人はいる。
ここで働いている二人の研究員だ。
ヤマトは研究所にいたから知り合った。
だけど今はいない。
どこにいるかなんて私に知る由はないし、知ろうとも思わなかった。
『イリヤー!?』
『今いく』
私は自室を出、すぐ近くの食堂へと向かった。
食堂につくと、先程言っていた研究員の一人が朝ご飯を作って待っていた。
彼女は【山越小夜】
私には母みたいな…ものかな?
うん、きっとそんな感じ。
研究員らしからぬエプロン姿で、ニコニコと笑いながら私が座るのを待っている。
エプロン姿はいつもどおりだけど、ニコニコしているのは珍しい…
疑問に思いながらも、私は椅子に腰掛け、箸を握る。
『いただきます』
『はいはいー♪ねー、イリヤ?』
『…』
なぜか嬉しそうな小夜の言葉に返答はせず、目を合わせることで返事を意を示す。
『今日はどこに行くの?』
『…遊園地』
私が答えると、小夜はさらに顔を緩ませる。
遊園地へ行くことは知っているのに、なぜ再び聞くのか…わからない。
『イリヤが外出…誰にも打ち解けれなかったイリヤが…』
『…?』
打ち解ける?
よくわからないが、小夜は喜んでいる。
そんな小夜を無視して、私は食事を済ませた。
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