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『よし』
ひとまず準備が終わった。
時間は……そろそろかな?
"約束した時間"だ。
『イリヤー!一人でいけるー?』
自室を出ると、それを察知した小夜がどこからか私に声を掛けてきた。
『大丈夫』
たぶん。
私はそれだけ言い残すと、玄関へと足を運んだ。
そして研究所を出た。
こうして私用で出掛けるのは初めてかも知れない。
そう考えると少しワクワクしてきた――気がする。
ところで遊園地ってどこだろう?
『小夜に聞いてみよう』
踵を返し、元来た道を戻る。
研究所に着くと、玄関に小夜の姿を見付けた。
『あ、あらイリヤ! どうしたの?今からついていこうと…』
『?』
『なんでもないなんでもない!』
なぜだか取り乱している小夜。
それが少し気になるけど、私は用件だけ手短に聞くことにした。
『遊園地ってどう行けばいいのかわからない』
『あはははは……てっきり調べ済みかと思ってたわ。イリヤが行くって言っていた遊園地はね、けんちょんランド行きの電車に乗って、そのまま終点で降りるとすぐ目の前に大きな観覧車が見えるの。そこが遊園地よ♪』
『わかった。ありがとう』
私は再び戻ってきた道を向く。
む――く?
『ネ……』
玄関先の石垣からひょっこりと顔を出す生物。
あ――れは。
『!!!!!』
私は駆け抜けた。ただひたすら……。
『あ、ちょ――イリヤー!』
後ろから小夜の声が聞こえた気がするけど、そんなのに構ってる余裕など持ち合わせていない。
猫がいたのだから。
『……怖かった』
気を取り直して遊園地を目指そう。
私は電車へ乗ろうと歩きだす。
『電車って何だろう?』
小夜に聞いてみ……。
駄目だ。
アレがいる。
ね、猫が!
となると自力で探すしか――そうだ裏口があった。
私はまた踵を返し、研究所へと歩を進めた。
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