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「召喚は成功したようですね」
突然斜め後ろから声が聞こえた。
そして同時に、暗かった部屋がふっと明るくなる。
眩しくて、私は思わず手で顔を覆った。
「異世界からの転移成功が初めて――」
「――でしたが、成功したようで何より―」
一人の声を皮切りに、四方八方から声が聞こえてきた。
結構大人数いるようだ。部屋が騒がしくなる。
私は恐る恐る手を下ろし、目を瞬かせた。
「!!!」
部屋には黒いローブを被った人たちがたくさんいた。
背格好は違うものの、皆ローブで顔まで覆っているので、老若男女の区別がつかない。
一体なんなの、これは。
フラッと意識が飛びそうになる。
無機質な灰色の壁、ローソクの輪、たくさんのローブの人、布を巻いた男…。
あぁ、夢なら早く醒めて。
「気分はどうですかな?ご婦人」
ローブを着た(声の高さからして男性だと思われる)人が、私に声をかけた。
私は彼を見返しただけで、何も言えない。
「――気安く話しかけるな」
布を巻いた男が、私とローブの男との間に割り込んだ。
ローブの男は「申し訳ありません、王」と言い、後ろへと下がった。
王?この人が?
私は何が何やらで、段々頭が痛くなってきた。
その時、ばさ、と衣が擦れる音がした。
更にばさ、ばさ、と続いていく。
周りにいる人たちが、ローブを脱いでいるのだ。
その間も、会話は絶えない。
その下から現れた顔は、見慣れた“人間“の顔の形をしていなかった。
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