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「朝よー!起きてー!」
私は遮光カーテンを勢いよく引いた。
薄暗かった子供部屋に、あっという間に光が満ちる。
私の息子と娘の部屋だ。
あまり広くはない。二つの机と二段ベットが窮屈そうに肩を寄せ合っていて、反対側にある本棚の上には、ぬいぐるみとプラモデルが仲良く座っている。
ん、と私は目を凝らした。散らばったプリントと、乱暴に放られ折り目のついた教科書を見つける。
「また片付けずに寝たのね、全く!」
その声と共に、二段ベットの下の段で息子の平が身を起こした。
平は枕元を探ってメガネケースを手にとった。薄めのレンズが朝日をチラリと跳ね返す。
「おはよう、母さん…オレは片付けて寝たからね…」
そう言って“くあぁ“と欠伸をし、平は部屋を出ていった。
平は低血圧だ。寝起きの様はヒデさん―私の夫にそっくり。
…そんな平に言われなくっても、散らかした犯人位すぐ分かります。お母さんだもの。
「千恵美、いつも片付けてから寝なさいって言ってるでしょ?」
私は腰に手をあてて、二段ベットの上段を見上げる。
少し間を置いてから、娘の千恵美が顔を覗かせた。ぴょこんと顔を覗かせるその仕草に、私は何となくうさぎを思い浮かべる。
「ママ、ごめんねー!今日帰ってきたら片付けるからーっ」
そう叫びながら、千恵美は二段ベットの階段を一気に降りた。
そして私の横をあっという間にすり抜けて、部屋の外へと飛び出していく。
これじゃあウサギというよりチーターだ。
やれやれ…私は思わず苦笑いを浮かべてしまう。
それから二人の後を追い、キッチンへと向かった。
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