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◆
そこは暗い部屋だった。
真っ暗なため、どの位の広さなのかは分からない。
ただ、部屋の真ん中に何かを取り囲むように、円状にローソクが立てられていた。
その灯りだけが頼りなく部屋を照らしている。
暗い部屋には幾人かの人が犇めいていた。
皆黒のローブをすっぽりと被っていて、人相は分からない。
ある者はローソクの円内で杖を用いて床へ何かを描き、またある者はブツブツと言葉になっていない言葉―呪文を唱えていた。
一人だけ、他の人とは違う衣装を身につけている者がいた。
その人物は引きずるほどの長さの、豪奢なマントで首から下を覆っていた。
顔には黒い布状のものを巻きつけている。
首から上だけ見ると、まるでミイラのようだ。
ただ、かなりの巨漢なのでまずミイラと見間違えはしないだろう。
その頭上には、申し訳なさそうに王冠が乗っている。
「…準備は整ったか?」
布で顔を覆った王が、周りの者に尋ねた。
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