プロローグ

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  ◆ 「どっこいしょっと!…やだ、おばさんみたい」 ゴミ袋を置いて思わずそんな言葉が漏れた。 どっこいしょなんて、自分で言ってて恥ずかしくなる。 私はつい先日誕生日を迎えて30歳になったばかりだ。 でも、自分で言うのも難だけどまだまだ20代でも通せる外見だと思う。 …誕生日の時にそう平に言ったら、可哀想なものを見るような目で見返されたけど。 あの視線は痛かった。 それから私はふとあることを思い出し、辺りを見回した。 「…今日も来てないかぁ」 私が探しているのは、黒い雑種犬だ。 今年頭辺りから、ちらほら団地に顔を出している、人懐っこい犬。 首輪をつけていたので誰か飼い主はいるみたいなのだが、いつも物欲しそうに私にすり寄ってきた。 なので、時々朝ご飯を分けてあげたりしていたのだ。 その犬が最近見かけられないので、少し気になった。 …が、それ以上詮索するのは止めた。 きっと飼い主の元で落ち着いているのだろう。  
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