プロローグ

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  私は空を見上げた。 空は真っ青だった。雲一つない快晴。 時折すーっと抜ける風は、春の香りでいっぱいで心地よい。 私は腕を上げてのびをする。 もうすぐ3月も下旬に入る。 あと何日かしたら、平と千恵美が揃って春休みを迎える。これからが大変だ。 右手を見ると、団地の庭に植えられている桜の木がつぼみをつけていた。 その桜の木で突然変な現象が起きた。 「……な、何これ」 まだつぼみばかりだった桜の花が、一斉に花開き始めた。 まるで、ビデオテープを早送りしているみたいに。 現実的な出来事じゃない。 私の頭は真っ白になってしまう。 ただただ、桜から目をそらせなかった。  
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