モラトリアム

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由美は部長として悩んでいた。 …もしも…誰かが退部届を出しに来たとして受け取れるかどうか… それを受け取っていいかどうか… 由美は一人で真剣に悩んでいた。 「わたしだって…怖いけど…」 由美は先代の部長と副部長から…探偵部を任された責任がある。 自分は その責任を全うしないといけないと思っているから――… 例え怖くても逃げたくないのだ。 …それに…他にも理由はあった。 「みんなと一緒にいたい…っ!」 由美は一人っ子だし両親は共働きだったから…寂しかったようだ。 いつも笑顔だけど…言葉にしないけど…由美は本当は寂しかった。 それでも由美は前を向いている。 ――――――――――――――― さくらは独りで怯えていた。 真悟が犯人に撃たれて…さくらの心は恐怖に支配されてしまった。 はっきり言って…この場から逃げ出して帰りたいと思っていた。 …だけど…逃げたくはなかった。 「…真悟さまは…疑われた桃子の無実を証明して犯人を探して… …犯人に誘拐された…わたくしを助けようと懸命に走って――… わたくしを抱きしめてくれた…」 さくらは あの時の真悟の温もり…あたたかさを忘れてはいない。 真悟の為に側にいて尽したい… 少しでも真悟の力になりたい… さくらは真悟の事が好きだから…自分に出来る事で支えたいのだ。 …それが…さくらの望みである。 ――――――――――――――― もちろん…幸人たちも悩んだ。 だけど…幸人は初めから探偵部を辞めるつもりなんかなかった。 幸人は家族のように あたたかい探偵部メンバー全員が好きだ。 だから…探偵部に残る事にした。 「真悟くんたちには…何度も助けられたし…救われた事もある。 ボク…みんなの事が好きだから…探偵部に残る事にするよ…―― 誠也くんと悠哉くんは…どう?」 「幸人が残るなら…僕も残る。 ていうか…先生がヤル気だから…お守りしなきゃいけないしね。 それに…幸人の側にいたいし…」 「誠也くん…?💦」 「――ぼくも残るっ!💦」 幸人と誠也の間に悠哉が入った。 「ゆきとくんやみんなと… ずっと…一緒にいたいから…!」 「悠哉くん…」 「悠哉が残るなら… あたしも残らなきゃダメよね?」 香澄は悠哉の頭を優しく撫でた。 .
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