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葛西家 ②
―16:46 葛西家本屋敷
しばらくして おれたちは葛西家本屋敷の大広間に集められた。
どうやら葛西家当主である樹一郎さんから何か話があるようだ。
その場は 緊張に包まれていた。
「敏樹…? 大丈夫か?」
「ははっ…まったく…
いつまでも 慣れないよ――…」
おれたちは制服に身を包み…
意外にも敏樹は着物を着ている。
敏樹は…すでに 正座をして膝に手を置いて当主を待っている。
膝に置かれた手は震えていた。
「お葬式の話しかな…?」
「それで この空気は…
ちょっとおかしいと思うけど…」
後ろで幸人くんと誠也くんの話し声が聴こえた…確かにおかしい…
英作さんと藤吉さんもいる――…
この広い大広間にしては少ない。
「当主様がいらっしゃいました」
襖が開けられ そこから年老いた男性が大広間に入って来た。
使用人の女性に支えられながら…
「敏樹…よく帰って来たな…」
「お爺様…お元気そうで――…」
「見え見えの世辞はよい…
自分の体だ。自分がよく分かる」
樹一郎さんの目は 生命に満ちていて全てを見透かしている様だ。
敏樹の表情が次第に雲っていく…
「…敏樹…分かっていると思うがワシは遠くない未来…死ぬ。
お前の父…信芳も死んだ。
一昨日の大雨で佳樹も死んだ。
我が葛西家を継ぐのは…
血の繋がった…お前しかいない」
「――やっぱり…その話か…」
敏樹は ゆっくり立ち上がった。
「お爺様…オレは 葛西家を継ぐ気はない! こんな家系…
もう途絶えたっていいじゃ――」
「――ふざけるなァァ!!
貴様…それでも葛西家か?!
誇り高き葛西家の人間が…
弱音を吐くとは何事であるか!」
樹一郎さんも立ち上がり激怒…
敏樹を凄い形相で睨みつけた。
「何が『誇り高き葛西家』だ…」
敏樹は樹一郎さんを見据えて睨みつけながら顔を上げる表情は…
普段の知っている敏樹じゃない。
「葛西家なんて…
人殺しの家系じゃないか…!!」
「――何だって?!」
「…敏樹…――貴様ァァァ!!」
樹一郎さんは傍らに飾ってあった刀を手に取り鞘から引き抜いた。
そして素早く近付き敏樹の喉元に刀を突きつけた…その眼は…
まさに殺人者の眼であった…――
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