葛西家 ②

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敏樹の喉元に突きつけられた刀…鈍い光を放つ刃の煌めきは黒い… 烏の羽のような漆黒の刃を向けて樹一郎さんは敏樹を睨んでいる。 敏樹も視線を反らさずしっかりと樹一郎さんの姿を捉えている。 おれの横を通り誰かが前に出た。 「まぁまぁ…💧落ち着いて…💦」 「あんたは…」 「失礼 致しました。 私は探偵の真田幸永と申します」 真田さんは得意の営業スマイルで敏樹と樹一郎さんの間に入った。 なんとか最悪の事態は回避した。 「敏樹くん…戻っていいよ。 樹一郎さん…刀を収めて下さい」 真田さんの仲裁で敏樹は元の場所に戻って座り樹一郎さんは刀を… 元の位置に戻して 座り直した。 「真田さん…さすがですね…」 「大した事ないよ…」 大広間は再び厳粛な空気に包まれ支配されたようになっていた。 口火を切ったのは樹一郎さん… 「取り乱して済まなかった… ワシは…お前に 葛西家を継いで欲しいだけだ…分かってくれ… 葛西家を継ぐのならワシの遺産は遺族である敏樹だけの物… この屋敷も お前の物なのだ!」 「すごーい…」 奈未は小声で呟いた。 樹一郎さんには聴こえていない。 「確かに 葛西家は…お前の言う通り人殺しの家系だ。しかし… 日本の歴史を守る為にも… 日本の経済を守る為にも… 葛西家を絶やす訳にはゆかぬ…」 樹一郎さんの悲痛な表情を見て… 敏樹は 下を向いて考えていた。 「何だよ…今さら… 今さら呼び戻して家を継げなんて勝手すぎるだろ! なんだよ… 今まで放っておいたクセに… 今さら家族面してんじゃねぇ!」 敏樹の叫びが大広間に響いた。 それを聴いた…樹一郎さんの手が僅かに反応するのが見えた――… どうやら 2人とも互いの主張を譲る気はないようで睨み合った。 大広間に 険悪な空気が流れる。 「確かに…それは済まなかった。 たが それは…佳樹を当主として教育する為に致し方なく… ワシには…お前が必要なのだ…」 「つまり それって… オレが 期待されてなかったって事だよね? それなのに… それなのに オレを呼んで… オレがどんな気持ちだったか… アンタなんかに分かるのかよ!」 敏樹の瞳からは涙が溢れていた。 「敏樹…」 「オレは…アンタを許さない… 絶対にアンタは許さない…!!」 敏樹は樹一郎さんを恨んでいた。 何故かは知らないが恨んでいた。 .
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