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その後…樹一郎さんの容態が悪くなり おれたちは部屋から出た。
そして…おれたちは 離れ屋敷に戻り みんな敏樹を避けていた。
敏樹は周りを見て溜め息を吐き…部屋から出て行ってしまった。
部屋には嫌な空気が漂っていた。
「敏樹くん…怖かったね」
「幸人くん…」
幸人くんが敏樹が部屋を出て行く後ろ姿を確認して小声で言った。
彼なりに 気を遣ったんだよな。
「…なんだか…いつもと違うっていうか…なんて言えばいいか…
よく分からないんだけど…
敏樹くん…迷ってると思うの…」
幸人くんは 周りを見てる。
みんなの反応が気になるのか…
「迷ってる…か」
「ボクの想像なんだけど…
敏樹くんは…樹一郎さんを恨んでいたけど本気じゃなかった。
鴉丸もワザと外した気がして…」
確かに…殺すつもりなら 簡単に殺害できるはず…なのに敏樹は…
樹一郎さんを挑発したり…鴉丸を床に突き立てたりしかしてない…
敏樹が何を考えているかは分からないけど…おれは敏樹を信じる。
アイツに人は殺せないって…――
「オレたちの前とジィさんの前とじゃ態度がまるで違っていた…
敏樹のあんな面…見たくねぇ…」
伊能先生は 竹林の先…滝の方を眺めながら煙草をくわえていた。
伊能先生も 敏樹を心配している様子で煙草に火がついていない。
動揺が目に見えて分かりやすい。
「……それにしても驚いたよ。
ウワサには聞いていたけど…想像以上に規模が大きい家系だね。
古くから続いてる歴史がある…」
真田さんが 壁や柱を触りながら笑顔で言った。ものスゴく…
楽しそうな笑顔で 触っていた。
「真田さん…葛西家の事…知ってたんですか? どうして――…
そんなに楽しそうなんですか?」
おれは少し飽きれ気味に言った。
公文さんは女子の部屋にいるからツッコミ係がいないんだよな~…
おれがツッコミをするしかない。
「探偵業界では有名な話でね…
日本を情報により裏側から牛耳る家系が存在するって話だよ。
一種の都市伝説だと思っていたんだけど…本当に実在するとは…
正直…驚きで胸がいっぱいだよ」
「そうなんですか…」
そんなウワサがあったなんて…
おれは 初めて聞かされた…――
「……ちょっと出て来ます」
おれは独り部屋から出て行った。
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