葛西家 ③

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おれは独りで渡り廊下を歩き出し廊下の先を見た。すると――… 長い渡り廊下の先から雅臣さんが歩いて来る姿が見えて止まった。 おれは その場で固まって…こちらに来る雅臣さんを見つめた。 雅臣さんは おれに気付かない。 おれは自分から雅臣さんに歩みを進める為に足を前に出した。 そして徐々に雅臣さんに近付いて行く…あと50メートルくらいで… 雅臣さんは おれに気が付いた。 「真悟くん…! 久しぶりだね」 「雅臣さん…どうしてここに…」 おれが訊こうとすると… 雅臣さんは…おれの唇に 人さし指を添えて「静かに…」の合図… 雅臣さんは 辺りを見渡して誰もいない事を確認すると横を指す… 誰も使ってない客室に入るように促している様だったから… 素直に従って客室に入った――… 「人の気配は…ないね」 雅臣さんは…廊下を遠くまで確認して襖を閉じた。そして座った。 おれも雅臣さんに続いて座った。 「さて…君の質問に答えよう。 僕は葛西樹一郎さんの代理人… 彼の遺産の事で話があったんだ」 「だから葛西家に…」 「…あと…実は僕ね…医師免許を持っているんだ。それでよく… 樹一郎さんを診ていたんだけど…容態が悪くて もう長くない。 だから彼は遺産の話をした… 僕が立ち会い樹一郎さんは遺書を書き上げて彼の部屋にある。 あっ…もちろん診察料はもらってないよ!💦 言っておくけど… 公務員は副業禁止だから…――」 「……分かってますよ💧」 そんなに否定しなくても… 誰もそんなの疑ってませんから… 「ここからが本題…! 驚いたのは樹一郎さんの遺産…」 「どうせ…億単位なんでしょ?」 しかし… 雅臣さんは首を横に振った。 「億なんてものじゃない… …兆…下手したら京単位かも…」 「――け、京単位ぃ?!💦」 「――声が大きい…っ!」 さすがに それは驚く… 葛西家って想像以上に金持ちだ。 「ご、ごめんなさい…💦」 おれは慌てて口を押さえた。 まさか…京単位だと思わなかったから正直な話…驚いてしまった。 兆単位でも億単位でも凄いけど… 「この事は… 僕と真悟くんだけの秘密だよ?」 「……分かりました。 おれ…誰にも言いません!」 「さすが… 兄さんが見込んだ教え子だね…」 「えっ…?」 「いや…!💦 何でもないよ💦」 何か言った気がしたけど… 聴こえなかったからいいか…―― .
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