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おれは葛西家の事を何も知らないままで ここに来た。どうやら…
おれが思っている以上に葛西家の家系事情は複雑なようだった。
その三家の狙いは恐らく葛西家の財産や家宝である『鴉丸』…か。
たぶん…敏樹も それに気付いている筈…だから敏樹は葛西家を…
継ごうとしないで葛西家を途絶えさせようとしていたのかも――…
そう考えると…敏樹の行動は実に納得できる事ばっかりだった。
敏樹は 葛西家を守ろうとして…
「飽くまで推測…か」
「藤吉さん…
三家の皆様がいらっしゃいましたから特別な離れに案内します。
それで よろしいですよね…?」
「あぁ…構わない。
くれぐれも粗そうのない様に…」
英作さんは藤吉さんに会釈をして渡り廊下を歩いた。後から…
3人の男性が付いて歩いていた。
「まさか…
佳樹くんが亡くなるとはなぁ…」
「そうなると…
葛西家を継ぐのは敏樹くんか…」
「誰が当主になろうと我々のする事は変わらん…尽すだけだ。
絶対的な主従関係だからなぁ…」
3人の内…先頭を歩く人物が軽く横目で おれを見たけど無視…
すぐに視線を前へと向けた――…
そして…3人は視界から消えた。
「今のが三家当主の方々です。
先頭にいらしたのが村雨紫明様…
その後ろに続いていたのが…碓氷憲史様と瀧龍太郎様です。
あの方々は佳樹様が当主になると思っていたようですが果たして…
敏樹様に どう取り入るのか…」
藤吉さんは何だか楽しんでいた。
「おっと…いけませんね。
葬儀の準備がありますので…失礼致します。準備が整い次第…
お呼び致します…お待ち下さい」
藤吉さんは おれに会釈をして…仏間の方へと歩いて行った。
おれも…大広間から出て行った。
行くアテもなく歩いていると…
中庭で掃除をしている菊絵さんを見つけたから…話しかけてみた。
すると菊絵さんは笑顔で返した。
「落ち着きませんか?」
「まぁ…葬式ですからね」
たわいない世間話…
菊絵さんはホウキを片手に話す。
「佳樹様と敏樹様…樹一郎様は…以前は楽しく遊んでいました。
敏樹様も家を継ぐつもりで当主になる為の教育を受けていて…
よく笑顔を見せて下さいました」
菊絵さんは懐かしそうに語った。
ふとホウキを動かす手を止めた。
「信芳様が亡くなるまでは…」
敏樹が豹変した理由が気になる。
何が敏樹を変えてしまったのか…
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