勘違い逃走

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御門は感心していた。 目の前にいる探偵は僅かな時間でトリックを解いてしまった様だ。 真田は満開の笑顔を咲かせた。 「犯人が…どうやって緒方さんを殺害したのか分かりましたよ。 考えれば…簡単なトリックです」 「やっぱり…狙撃ですか?」 「でも…この辺りで狙撃に適している向かいのビルの屋上から… この場所を狙撃する事は不可能…通行人に不審な人物はいない… なら犯人はどこから狙撃を…?」 「まず…そこから違うんだ。 犯人は狙撃なんかしてない… 恐らく犯人は事前に下見をして…狙撃は不可能だと知っていた。 だから…犯人は確実に緒方さんを殺す方法を思いついたんだよ。 かなり周到に仕組んだトリックで緒方さんを追い詰めて殺した… かなり…残忍な方法でね…――」 「そのトリックって…」 その時… 冴美が蓮華を連れて歩いて来た。 「蓮華さんの持ち物に不審な物や凶器になりそうな物はなく… 事件当時…蓮華さんには 確かなアリバイがありましたので… 疑う必要はないと思いますが…」 「確かなアリバイって?」 「ずっと秘書室で仕事をしていたようで同僚の秘書が見てます。 それが…確かなアリバイです…」 「それは確かなアリバイだね… 蓮華さん…貴方に1つだけ質問をしてもよろしいでしょうか…? どうしても お尋ねしたくて…」 「なんでしょうか…」 真田は女性にウケがいい爽やかな笑顔を蓮華に向けて微笑んだ。 すると…蓮華も微笑み返した。 「もしかして緒方さんって――…心臓に持病があったりします? もしくは心臓が弱かったとか…」 「あ…昔から心臓に腫瘍があったようですが手術で治療したと… 緒方から聞いた事がございます」 それを聞いた真田は深く頷いた。 どうやら最後のピースがパズルにフィットして完成した様だった。 真田は満面の笑顔で礼をした。 「これで完全に分かりました。 犯人はどのような方法を使って…緒方隆賢さんを殺害したのか… 彼を殺した方法は…とても非情で残忍なトリックではないかと… 私は…そう思っています…――」 真田は遠くの空を見上げた。 二羽の鳥が仲良く飛んでいるのを見ながら寂しそうな目を見せて… 真田は悲しい気持ちになった。 「幸永さん…」 幸人は心配そうに真田を見た。 彼は僅かに微かな笑みを見せた。 .
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