モラトリアム

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マスターは全員にコーヒーを振る舞い梨花さんが笑顔で配った。 おれはコーヒーを一口だけ飲み…その場にいる全員を見渡した。 みんな…本気で考え込んでいた。 「真悟くんの考えは もちろん…まとまっているんだよね――… さすが…偉いよ。真悟くんは…」 雅臣さんが隣に来て話しかけた。 「僕…迷っているんだ…兄さんの代わりに顧問を引き継いだけど… ここにいてもいいのかなぁ…って今でも迷う時があるんだ…―― ここに…僕の居場所はあるのか…探偵部にいてもいいのか迷う… 30分で答えが出るか不安だよ…」 「雅臣さん…」 雅臣さんが悩んでいたなんて… おれは今まで気がつかなかった。 ――――――――――――――― 2階のスペースにいる藍那は下にいる真悟の姿を見つめていた。 その目は何だか…うつろだった。 「一緒にいたいけど…」 藍那は…自分が抱いている想いを口にする事は怖い事だと思って… いつからか…ワガママを言う事を躊躇い言わなくなってしまった。 幼馴染みの剛久にも気を遣う… 「ワガママなんて…小さな子供にしか許されない特権なのよね… 私には…遅すぎたくらい――…」 「お嬢は龍崎組を継ぎたくない…しかし…期待に応えたいから… 自分に嘘をついて無理をなさっている事が…俺には分かります。 ご自分に正直に生きて下さい… どうか…素直に生きて下さい…」 剛久に言われて藍那は微笑んだ。 ――――――――――――――― 律は初めから覚悟を固めていた。 「真悟くんが…僕を信じてくれたから…今の僕は ここにいる。 あの時…誰も信じてくれなければ僕は立ち直れなかったと思う… …僕は…最期まで真悟くんの側にいて…彼を支える為に生きる。 死ぬ覚悟なんて…していない…」 律の意思は固い決意だった――… ――――――――――――――― 初めは軽い正義感から始まった。 すると探偵という仕事が どんな仕事なのか理解する事が出来た。 奈未も探偵部に残る気のようだ。 『ナミちゃんは 国民のアイドルなんだから…死んじゃダメだ! 命が危ないなら辞めなきゃ…💦』 「わたしは…ナミじゃない! …アイドルのナミは…南樹奈未の延長線上にある空想なのよ…! わたしは南樹奈未として… 絶対に…逃げたりなんかしない」 奈未は震えて涙を浮かべていた。 「…八神さん…ごめんなさい…」 奈未は八神との電話を切った。 .
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