第17話 プロローグ

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第17話 プロローグ

―8月1日(水) ―12:32 葛西家屋敷大広間 ここは敏樹の実家…葛西家…―― 当主である葛西樹一郎が使用人や家族を集めて話をしていた。 樹一郎は老年…葛西家を継ぐのは敏樹の父親の信芳だが…しかし… その話をしようとしていた――… 「信芳が死んでしまった今… 葛西家を継ぐのは信芳の息子… つまり 佳樹…お前と東京におる敏樹の2人だけという事になる。 候補者が2人だけとは… …何とも…なげかわしい事だ…」 「…お爺様…長男である私がこの葛西家を継ぐに値するかと――… 敏樹に当主は務まりませんよ…」 敏樹の兄…葛西佳樹… 野心家で自信家の男である…―― 「お言葉ですが…樹一郎様…」 「なんだ? 申してみろ…」 申し訳なさそうに面を上げたのは葛西家使用人頭の松居藤吉… 葛西家使用人の中で一番の古株… 「治樹様は――…」 「――奴の名を口にするな!!」 樹一郎は凄まじい形相で怒った。 治樹とは…一体 何者なのか…? 「奴は…葛西家の人間ではない。 奴は…もう死んだのだ。 奴の事はもう忘れろ…よいな?」 「…はっ…申し訳ありません…」 一同が静まるのを見て… 樹一郎はゆっくり立ち上がった。 「ワシは部屋に戻る…菊絵! 今日は雨だ。吊橋が落ちる恐れがある…他の使用人で補強を頼む。 では…本日の会議はこれまで…」 樹一郎は使用人の梅宮菊絵と共に自分の部屋に向かって歩いた。 菊絵に支えられながら歩いた。 「お爺様は…もうダメだな。 これからは俺が葛西家の当主…」 佳樹は口の端を持ち上げた。 「佳樹様!申し訳ありません… 吊橋を補強いたしますので… 暇なら手伝って頂けませんか?」 皮肉っぽい口調で言ったのは… 若い使用人の竹芝英作だった。 「――英作! 早く行くぞ! 早くしないと雨が強くなる…」 「はいはい…」 「藤吉さん!俺も行きます。 葛西家次期当主として… 当然の事…ですからねぇ~…」 佳樹と英作と藤吉は吊橋に向かい橋を補強する作業を始めた――… 雨は次第に強くなり…崖の下へと水が流れていくし土もぬかるむ。 少しでも足を踏み外せば… 深い谷の底へと落ちて行く――… 「落ちたら死ぬ――…な!?」 佳樹の背中を誰かが押した――… それにより佳樹は崖下へ落ちた。 「――うわぁぁぁ!!」 「――佳樹様!?」 崖下へ落ちた佳樹は即死だった。
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