482人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
敏樹の実家
―8月3日(金)
―12:30 列車
おれたちは 敏樹の実家へ向かう為に列車を乗り継いでいた。
真田さんの事務所を出てから…
ずっと敏樹に元気がなかった。
詳細は不明だが…敏樹の兄さんが不慮の事故で亡くなったらしい。
おれも少しだけ会った事がある。
人当たりはよかったが…何か嫌な雰囲気を感じていた記憶がある。
その葛西佳樹さんが亡くなった。
佳樹さんの葬式を行う為に敏樹は実家へ帰省するらしいけど――…
敏樹はずっと沈んだままだった。
「敏樹…元気ないね…」
「確か…敏樹が施設に預けられた理由は ご両親が亡くなって…
実家で育てる事が出来ないから…施設に預けて育ててもらった。
おれは…そう聞いていたけど…」
敏樹は独りで窓際に座り溜め息を吐いて外の景色を眺めていた。
まるで 魂の抜け殻だった…――
「なんか…調子 狂うなぁ…💧」
「ホントね…」
伊能先生は悠哉くんと騒いでるし女子チームも話しをしている。
幸人くんと誠也くん……主に誠也くんは長谷川さんを無視した。
長谷川さんは独りで座席にいる。
真田さんと冴美さんも…
2人で何かを話している様子だ。
おれは…彩乃と一緒にいる。
何故かって?敏樹を見張る為だ。
今の敏樹は何をするか分からないから…おれは見張っているんだ。
彩乃が付き合う必要はないけど…
物好きなようで付き合っている。
「お前も 話しに加わってくれば良かったのに…なんでまた…
おれなんかと一緒にいるんだ?」
「い、いいでしょ別に…💦」
少し慌てた彩乃に おれは…首を傾げてコーヒーを一口 飲んだ。
そして 周りの景色を見た――…
「本当に田舎だな…」
矢のように流れていく景色を見て呟くと彩乃が おれを見ていた。
それに気付いて彩乃を見ると…
彩乃は おれから目を反らした。
「……なんだよ?💧」
「いや…なんかさ…
こんなの久しぶりだなぁって…」
彩乃はバツが悪そうに言った。
「最近いろいろあって…
真悟と ちゃんと話してなかったから…なんか照れちゃって…
私らしくないから言わないっ!」
彩乃はガラにもなく照れていた。
こんな女の子らしい一面があった事に少しだけ驚いたけど――…
いつの間にか…
敏樹が いなくなっていた…――
「――敏樹?!💦」
「探さなきゃ…!💦」
おれたちは敏樹を探しに行った。
最初のコメントを投稿しよう!