敏樹の実家

2/3
前へ
/270ページ
次へ
取り合えず暇そうだった誠也くんと幸人くんを誘い敏樹を探した。 列車内をくまなく探したけど… 誠也くん……さすがに ゴミ箱の中に敏樹は いないと思うよ💧 幸人くん…座席と座席の間には…さすがに いないと思うよ💧 それを言ったら 明らかに…誠也くんは悪い笑みを浮かべていた。 けど幸人くんは素だったらしい。 「どんだけ~…」 「やっぱ…幸人くんって天然ね」 そんな事より…いや 興味はあるけど今は敏樹の方を探して――… そうやって探していると…ついに敏樹を見付ける事に成功した。 敏樹は列車の最後尾にいた。 独りで思い詰めた様子だった。 何を考えているかは 分からないけど…いい事じゃない事は確か… いつもの敏樹とは違って冷たい…命が感じられない眼差しだった。 それほど…ショックだったのか。 あまり会えなかったけど…敏樹にとっては大事な兄さんだった… だから敏樹はショックを受けた。 だから あんなに元気がなくて… 「敏樹…」 おれは敏樹に呼び掛けた。すると敏樹は僅かに おれを見て… また窓の外へ視線を戻した…―― 「お兄さんの事は… 本当に残念に思うけど――…」 「――違う! オレは… 兄貴が死んだからショックだったワケじゃない…違うんだ…っ! 兄貴が死んで前に父さんが死んだから…オレが実家を継がなきゃ… 実家を継ぐのが…嫌なんだ…!」 敏樹の悲痛な叫びが 誰もいない列車の最後尾に響き渡った――… 見ると…敏樹は涙を流していた。 「…オレ…ヤだよ… 真悟たちと離れたくない… …ずっと…一緒にいたいんだ…」 敏樹は自分の肩を抱いてシートの横に膝をついて僅かに震えた。 いつもの敏樹じゃない… 敏樹の悲痛な心の叫び… 軋んでゆく心の音が聴こえた。 だから おれは敏樹に歩みより… 敏樹を優しく抱き締めてやった。 すると敏樹は回した おれの腕をギュッと強く握ってきた… その手が白くなって震えていた。 「…真悟…オレ…実家が怖い… …あの家に…帰りたくない… …帰ったら…オレ…オレ…――」 敏樹は不安そうな声で言うと… おれの腕を更に強く握ってきた。 「あの家は…まさに生き地獄…」 「生き地獄…?」 敏樹に そこまで言わせた実家… 葛西家とは…一体 何なのか… この時は分からなかったけど… 本当に とんでもない家だった。 .
/270ページ

最初のコメントを投稿しよう!

483人が本棚に入れています
本棚に追加