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しばらくして敏樹は落ち着いた。
何とか我を取り戻して…少しだけ笑顔になっていて ホッとした。
列車を乗り継いで…遂に着いた。
敏樹の実家がある飛騨高山…
険しい山道を通って山を登る。
「真悟…ありがとう。
真悟のお陰で少し楽になった…」
敏樹は おれに笑顔を見せた。
まだ迷いがあるみたいだけど…
なかなかいい笑顔になっていた。
「しかし…こんな山奥かよ~…」
伊能先生は最年長だから…かなり疲労している様子だったけど…
おれたちも結構きつかった――…
何と言っても夏だから…
暑くて暑くて仕方なかったんだ。
特に悠哉くんみたいな子供は…
この山道は…一番 辛いと思う。
「せんせぇ~…つかれた~…」
悠哉くんは伊能先生に甘えた。
伊能先生は悠哉くんの頭を撫でて笑顔で返していたが余裕はない。
それに対して 真田さんは――…
「いやぁ~…健康にいいね」
なんて 爽やかなんだろう…って明らかに おかしいだろっ!
真夏にスーツで涼しい表情って…
しかも 公文さんも涼しい表情…
「公文さん…慣れてますね…💧」
「趣味ですから…」
公文さんは眼鏡を直して言った。
「趣味…ですか?」
「冴美くんは登山が趣味で…
よく2人で山に登ってたんだ。
最近は行ってなかったけどね…」
だから2人は涼しい表情で…
それにしても爽やかな2人だな。
「…はぁ…はぁ…」
幸人くんは息を切らせながら前に進んでいる。その様子を…
誠也くんはジーッと見ていた。
「……誠也くん?」
「…色っぽい…」
なんか呟いたけど…
聞かなかった事にしようかな。
「なぁトッシ~…
お前の実家…まだなのかよ~?」
伊能先生は いつの間にか…悠哉くんを背負って山を登っていた。
自分から辛い道を選ぶなんて…
やっぱ悠哉くんには敵わないか。
「そろそろだと思いますけど…」
敏樹は元気に山を登っていた。
「あ…っ! 見えました!
アレがオレの実家…葛西家です」
そこに見えたのは巨大な日本家屋…純和風の大きな屋敷だった。
敏樹の表情が僅かに曇った――…
「――でかっ!!」
「トシくんって…
お金持ちだったのね~♪
もしかしたら…玉の輿に…!!」
おれは敏樹を見た。すると…
敏樹は おれを見て微笑んだ。
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