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いつもの陰陽寮で、いつも着ている服…。
当たり前の事が、こんなにも、安堵する材料になるとは、泰明自身も驚きだった。
「何故…墨染の夢など見たのだろう?あまり関係はないとは思うが…」
外にある清水で顔を洗い、口を念入りにすすぐ。
そのまま、近くの寺社に向かい、僧侶達の修行に使う、滝を借り禊と称して、水浴びをした。
水に濡れた、白装束が身体に貼り付く。
「!!」
忘れようとした夢の中の出来事が、事細かに色鮮やかに甦る。
ぐっと襟を押さえて、力なく水の中に座り込む。
波紋が幾重にも広がり、消えてはまた生まれる。
パシャン…と何かが動く音と共に、泰明の姿はそこになかった。
揺らめく水面に、新緑の糸が見える。
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