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ただ、同じ時間と運命を共有した仲間として、覚えていてくれれば、それでいい…。
「何を憂いておいでかな?淡き若草の君は」
「友雅…」
「こんなに良い陽気なのに、屋敷に篭っては黴てしまうからね」
くすりと笑う、深い緑を纏う彼を、泰明は無表情で見つめた。
想いを知られてはいけない…。
想いは深い深い意識の底に沈めなければ…。
──想い?
泰明は初めて自覚した気持ちに戸惑いを覚え、やおら立ち上がると、その場を足早に立ち去った。
「おやおや…泰明殿の機嫌を損ねさせてしまったかな?」
扇をパッと開き、口元を隠すと、友雅は澄みきった空を見上げるのだった。
「私は……どうして…こんなにも取り乱しているのだ…?」
落ち着こうとすればするほど、浅く早くなる呼吸に泰明は焦る。
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