陰の月夜

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夜の帳が下りると、一気に周りの空気が、重く陰鬱な雰囲気に変わった。 泰明は陰陽寮の自室で、呪符などを書く作業を終え、そろそろ休息を取ろうと横になった時だった。 「っ!!」 猛烈な吐き気と頭痛に襲われ、目の前が暗くなり、そのまま気を失ってしまった。 気が付くと、桜の花びらが舞う、墨染の桜の大樹の下に座っていた。 泰明は、何故自分がここにいるのか分からなかったが、一番分からなかったのは、季節は初夏のはずなのに、桜が満開という事である。 鬼や怨霊の仕業かと思い、辺りを見回しながら、気配を探るが、墨染には、彼以外には誰もいないようだった。 そう言えば…と、泰明は思い出した。 あれほどひどかった、吐き気と頭痛が嘘のようになくなっていた。
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