陰の月夜

3/9
前へ
/31ページ
次へ
しかし、何だか衣服に違和感を感じる。 何となく衣服が窮屈に感じるが、下の袴のような着衣は、腰の辺りが緩い感じだ。 ふと胸に手を当てると、有り得ない二つの膨らみが…。 「!?」 下に手をやると、なくてはならない物がなかった…! 「………私は女になってしまったのか?これでは、神子の助けにならないではないか…!」 神子を守るべき八葉が、守られるべき女になってしまうとは、どういう事か。 泰明は動きにくい衣服を、無理なく動けるように整え、墨染の中を、舞い散る桜の花びらと共に歩き出す。 眠る前にほどいていた髪が風に乱され、何度も掻き上げ、また視界を遮る。 こんな時、長い髪が本当に嫌になる。 天真や詩紋やイノリくらい短ければ、このような煩わしさもないのだろう。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加