陰の月夜

4/9
前へ
/31ページ
次へ
時々、それくらい短く切ってしまおうかと思うが、何となく踏ん切りがつかず、結局長いまま。 切るにしても、そんなに短くは出来ないだろう。 切っても、友雅くらいの長さが関の山だ。 ……友雅…。 今は一番逢いたくない人物…。 女好きな彼の事だから、きっと女になった自分を優しく扱うに違いない。 そんな惨めな自分は見たくない。 「これは美しい桜の姫君だね。もしくは月光の姫君かな?」 泰明は振り返る事もなく歩き続ける。 「つれないね。それとも…私を焦らしているのかな?」 桜の花びらを纏うようにして、泰明の後を楽しそうに追い、ふわりと後ろから抱きすくめる。 「離せ…!」 泰明の焦る声をよそに、友雅の手は泰明の胸の膨らみに手を触れて、優しく愛撫する。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加