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最初に感じたのは、風。ヒリつく様な渇いた、渇き切った風だった。
そして、見渡す限り永遠に続く、砂。
その銅が錆びた様な赤茶けた砂は地平線まで続きゆるやかな弧を描くラインが引かれ下は赤い砂、上は雲一つ無い青い空。
目に見える世界は古ぼけた赤とこれ以上無い程の青、そのニ色で構成されていた。
薄汚れた布をまとっていた。
それは服というより布だった。
そして右手には長い剣。黒い剣だ。
闇よりも、何よりも黒い漆黒の剣。
ここはどこだろう…何故こんなところにいるのだろう…こんな物を何故持っているのだろう?
酷く喉が渇く。
不意に左手の柔らかな感触に気付いた。
幾つも年の変らない少女だ。同じく布を一枚まとっている。そして彼女と俺はどうやら手を繋いでいる。
その少女の事を疑問に思う前に答えはあふれ出た。
この娘は俺の大切な人だ、今までずっと旅をしてきたじゃないか。
そしてやっと辿り着いたんだ、この地に。
「いいえ、違うわ。」
突然彼女は諭すように口を開いた。
大きな潤んだ瞳が少し見上げるように俺を見ている。そして彼女続ける、核心を。
「これが始まりよ…レイン。」
彼女は俺の名を最後に呼んだ。
それは魂につけられた最初の名だった。
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