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雲行きのあやしい天候。
波瀬中の屋上で、天を濁った目で仰ぐ勇樹。
フェンスに手をかけ、そっと目線を下ろす。
程遠い地上……不吉を象徴するかのような冷たい風。これだけの高さからなら……
しかし、死への恐怖が脳内にノイズのようなものとなって現れて、自殺しようとする覚悟を揺らめかせる。
結局、汗まみれの手をフェンスから離し、うつむいたまま後ろに体を向けた。
それと同時に、朝の休み時間の終わりを示すチャイムが学校全体に鳴り響く。
勇樹は急ぐ気力もなく、臆病者の自分を呪いながら歩きだした。
勇樹は自分の教室に戻ろうと階段を下り始める。
今日もダメだった。じゃあいつ決行するんだ?
生きるのが辛い。死ぬのが恐い。じゃあどうしろというんだ……
勇樹は、苛烈な板挟みに精神を苛まれる。……いつになれば、この惨劇から解放されるのか。
そう思った。
さらなる惨事がこの身に襲いかかる事など露知らず。
ふと、勇樹が足を止めて閑静な辺りを相変わらず濁った目で見渡す。
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