6.「瞳の光」

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  やっとテーブルに戻ってきた蛇骨の皿には色とりどりのケーキが並んでいた。   「おめぇな…」 蛮骨は流石に呆れる。 「いくらなんでもその量はないんじゃねぇの?」 「せっかく飛天が今日はタダっつってんだから徹底的に食わなきゃ勿体ねぇじゃん」 蛇骨は桜のジュレがかかったチーズケーキをぱくり、頬張って、うっま~い😃💕と体を揺らした。 「大兄貴もほらっあ~ん💕」 突き出されるフォークを、蛮骨はやめろ、と避けるつもりだった。が、ふと視線に気付き、そのまま頬張った。 蛇骨が瞳を煌めかせた。 いつもなら邪険に払われるのに。 「大兄貴…」 嬉しくて、もう一口差し出すと、 「おれはこっちでいいや」 蛮骨は焙じ茶のプリンを取り、フォークを躱した。 「ちぇっつれねぇの」 がっくりして桜のチーズケーキに取り組み始めた蛇骨に笑いながら、ちら、と視線の方を見た。 まともに目が合った。 (気に食わねぇ目だな。けどやっぱり腕はいい)   手に取ったプリンは、焙じ茶の独特の香ばしい風味が上手く活かされていて幅広く好まれるだろう。 こういう仕事の出来るあいつと話してみたい、そんな気にもなる。 一見、血気に逸り、逆上したら手が付けられなさそうなのに。   「…そんで親父さん亡くなってこれから兄弟二人でやってかなきゃだろ、おれ毎日来るねって言ったの」 「ふぅん」   ああ。そうか。 あいつの目、あの譲らねぇ目はそういう覚悟の目だったのか。   (蛇骨のこと抜きで話してみてぇな)   蛇骨のとりとめないお喋りに相槌を打ちながら、蛮骨は心の隅で考えていた。
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