7.「交錯」

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  「蛇骨」 「なに?煉骨の兄貴」 朝食の後片付けの最中のことだった。 「おまえ今日バイト休みだろう。天気もいいし、居間のカーテンを洗っておけ」 「えぇ~?!」 「洗濯係だろうが。やっておけよ、この頃消臭剤で追い付かなくなったからな」 煉骨に言われ、蛇骨は思わず鼻をくんくんさせる。 確かに食べ物の匂いやら、様々な生活臭がした。 「やっぱそぅか~なんか服とか鞄に匂いが付くなぁと気になってたんだよな」 「今日の天気逃すとまた何時洗えるか分からねぇぞ」 蛇骨は大きな溜息を吐いて、肩を落とした。 恨めしげにテラスに目を向けて、 「太陽のばか」 小さく呟いた。   蛇骨が飛天の店に着いたのは、予定の時刻を2時間余り過ぎてからだった。 「ごめんな~煉骨の兄貴に野暮用頼まれてよ」 「…休みの日に来なくていいんだぜ」 白いコックコートに身を包み、手元を忙しく動かしながら、飛天は答えた。 「なんだよぅ、いつもいい加減にしか飯食ってねぇってマスターから聞いて昼飯作って来たのに」 「そいつは有難うよ。何作って来たって?」 「おにぎり」 「だけ?」 「おかかとか鮭とか、梅も入れた。米食うと力出るんだって大兄貴言ってたから」 「…へぇ」 蛇骨は飛天の働く姿を眺めた。 簡潔な返事に終始し、無駄口叩く間はないと言っているような横顔。   じっと見ていたが、やがて立ち上がった。 「お昼の弁当、2階の冷蔵庫に入れとくな」 「ああ。休みにすまなかったな」 振り向いた蛇骨が見たのは、変わらずせっせと作業台に向かう飛天の姿だった。   「おれ火曜にバイト入れよっかなぁ」 「無休で働くのかよ」 「うーん…シフト変えてもらって火曜は飛天の店手伝おうかなって」 蛮骨は眉をひそめて、蛇骨の方に寝返りをうった。 湯上がりの良い香りが蛇骨から漂う。 「あいつらがバイト雇える余裕あるとは思えねぇがな」 「だよな。ま、しょうがねぇっか……」 だがその言葉とは裏腹に、蛇骨はまだ思い悩む様子で、蛮骨の胸元に凭れた。   (蛇骨、一体何考えてやがんだ…)   問い質してもいい筈なのに、何故か口に出せない。   寝息を立て始めた蛇骨を抱きしめながら、蛮骨は天井を睨み続けた。
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