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今日がバイト休みで良かった。
ベッドに沈みそうなだるさで起き上がれず、蛇骨は胸の中でごちた。
(ほんとに寝かせてくれなかったし。どうなってんだよ、大兄貴の精力って)
その原因たる蛮骨はさっさと起床し、着替えている。
そして容赦なく布団を剥いだ。
「蛇骨、もぅ起きな。また煉骨が茹でタコになるぜ」
「だるくて無理。先行ってて大兄貴」
「駄目だ。朝飯はみんなで食べるって決めただろ」
だら~、と四肢を投げ出して力無い体を、蛮骨はすっと抱き上げた。
無理~起きられねぇ~などとうだうだ言ってる蛇骨に全く耳を貸さず、居間へ連れ降りる。
食卓では5人の内の殆どが朝食をすませかけていた。
「蛇骨、なんだ、そのだらしねぇ格好は」
案の定、煉骨に冷ややかな目を向けられる。
「ちょっと無理させちまったんだ。そう責めんなよ」
蛮骨の言葉に、煉骨は、大兄貴は庇い立てし過ぎる、と苦言を呈しながらも2人に朝食を準備して、出勤していった。
「おら、しっかり食えよ」
ヨーグルトだけ舐めるように食べている蛇骨にサラダを促すが食欲ねぇの、と首を振る。
「しょうがねぇ奴だなぁ」
蛮骨もそこは強要せず、食後の苺を摘もうとした。
「あっ」
「えっ?」
唐突な蛇骨の声に思わず、そっちを向くと、『あ~ん』と可愛らしく口を開けていた。
蛮骨にしてみれば全くそのつもりはなかったのだが。
反射的に摘んだ苺をその口に運んでしまっていた。
「あっま~い😃💕」
蛇骨のはにゃん、とした笑顔にはっと我に返る。
「蛇骨…おめぇ自分のあるだろうが」
「もういっこ~💕」
「調子のんな」
ごちん、とひとつ頭に食らわせて、蛮骨は自分の分をさっさと平らげた。
ぶたなくったって~と涙目の蛇骨に構わず。
(あれは雛の生存本能みたいなものだな…)
ちょっと離れて、その一部始終を見ていた睡骨は妙に一人で納得していた。
その日、苺が小ブームになってしまった蛇骨から苺のケーキ苺のケーキとまとわりつかれ、飛天が大変な思いをしたのは蛇足の話である。
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