13.「餌付け」

2/2
前へ
/90ページ
次へ
  「あっおかえり💕蛮骨の兄貴」 「おぅ、ただいま」   学校から帰宅して、蛮骨は何となく違和感を感じた。 一体何がいつもと違うってんだ?   着替えて、居間に戻ると蛇骨が膨大な量の洗濯ものを畳んでいる。 特に普段と変わることのない光景だ。 蛇骨の隣に座り、畳むのを手伝う。 これだって特段のことでもない。 ちらっと蛇骨を見ると、機嫌良さそうに鼻歌を歌いながら手を動かしている。 「なに?」 「?」 「なんでそんな見てんの?」 「いや…おめぇこそ随分機嫌良いじゃねぇか」 蛮骨が問い返すと、蛇骨はぱあぁっと頬をほてらせ、満面に笑みを浮かべた。 まるで、そこら中に花を撒き散らすような、輝く笑顔。   (ほんっとヤバいよな~こいつのこういう顔)   蛮骨は思わず見惚れた。 蛇骨が花を振り撒き、嬉しくてしょうがないと体を揺らして答えた。 「あのね、今日苺凄く美味かったからさ、飛天に苺のケーキ作ってってねだってみたんだよ」 蛮骨は呆然と固まった。 蛇骨のピンクの唇が動くのを見つめながら。 「でも今日突然言っても無理って、そんでも苺のスムージー作ってくれたんだよ。その代わり明日中に考えて明後日には食わしてくれるって!!もう~~おれ明後日待ち遠しい~~!!😆💕💕」   ごちん。   「いってえぇー!!😭💦なんで殴んだよ~~!!😭💦💦」 「うるせえっ馬鹿っ面して笑ってっからだ!!💢」 蛮骨の怒声に蛇骨はさらに涙を浮かべて、 「なにそれ!!笑ってなに悪いんだよっ大兄貴の横暴!!大兄貴なんか苺くれなかったくせに!!そんな訳分かんねぇ大兄貴なんかだっきらい!!」   蛮骨の脳天に稲妻が落ちたような衝撃が走った。 瞬間、何がいつもと違ったのか悟った。 自分が帰宅したのに蛇骨は飛びついて来なかったのだ。   その夜、二人は一言も口も聞かず、それぞれのベッドで夜を明かしたのだった。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加