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蛇骨が浮かない顔をしている。
店に来た時からいつものような陽気さがなく、それどころか段々落ち込んでいってるようだ。
一昨日はあんなに苺、苺とうるさいくらい元気だったのに。
飛天は無言で、視線も虚ろな蛇骨の前に皿を出した。
「…きれい…ロールにしたんだ。色とか薔薇みてぇ…」
蛇骨の瞳に少し輝きが戻った。
ピンク色の生地は苺を粗潰ししたジュースを混ぜているのだろう、爽やかな甘みと果肉のつぶつぶした歯触りがある。
生地と一緒に巻かれている白とピンクのマーブル模様のクリームは酸味がアクセントに効いている。
一口、一口運ぶ毎に、蛇骨の頬が柔らかなピンクに染まっていった。
「甘酸っぱい…」
「美味いだろ」
「うん。真ん中のクリームんとこもほわほわしててすっげ美味ぇ。なんかヨーグルトみてえな味する」
「ご明答。マシュマロとヨーグルト。前にテレビで見たのアレンジしてみたんだ」
「へぇ…」
ほんと美味い。
ほんときれいだし。
こんなケーキを一人で食ってるなんて。
急に悲しくて寂しくて、フォークをくわえたまま、蛇骨は俯いた。
(あ~あ。あの野郎に塩送るみてえで気が進まねぇんだけどな)
飛天はしょんぼりと俯く姿を見てられなかった。
「残り持って帰れよ」
「えっいいのかよ?」
ふっと笑って、飛天は蛇骨の額を小突いた。
「たっ…何すんだよぅ」
「今日のうちに食えよ。食ってちゃんと仲直りしな」
蛇骨は間抜けなくらい、ほけっとした顔をした。
「なんで分かんだよ…?」
「おれは色々分かっちまうんだよ」
本当はかまかけてみたんだけどな。
あ~あ。
でも、早く笑顔に戻って欲しいのは本音で。
そんなべそかいて、への字な口じゃなくって。
「ありがとな…」
蛇骨の声はまだまだか細かったが、
「また作ってくれる?」
おねだりさんが戻っていた。
飛天はしょうがねぇなぁ、と内心自分に呆れつつ、安堵して笑った。
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