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どこに行ったんだ。
蛇骨が帰らないが、と煉骨から聞いて、蛮骨は近所を見て回った。
バイト先もあたってみたが、定時で上がっている。
だったらもぅ3時間も経っている…。
(何やってんだ、あいつは)
あたるべき所はまだある。
蛮骨は渋々、携帯を取り出した。
『6時には帰ったぜ』
飛天は怪訝そうに返してきた。
『まだ着いてねぇのか』
「ああ…」
苦々しく答えると、飛天の揶揄するような声がした。
『ケーキ持ってっから、そう遠くには行ってねぇと思うけどな。どーもおめぇには蛇骨は手に余るみてえだなぁ』
「ぬかせ」
電話を切り、ばくん!と携帯を閉じた。
ちくしょう、あんの野郎。
電話向こうで飛天が笑っているような気がして、それにムカッ腹立ててる自分も腹立たしくてならない。
全くあいつは一体どこ行ったんだ。
小さな神社の森が見えてきた。
蛮骨は来た道をそのまま引き返してきたことに気付き、舌打ちした。
このまま家に帰れねぇだろうがよ。
ともかくもぅ一度駅周辺を見回って来ようと、身を翻した。
(ん?)
何か声らしきものを耳にした気がした。
辺りに注意を払っていると、どうやら森の方から聞こえてくるようだ。
そっと小さな鳥居から入って行く。
やがて、囁くような言葉が届いた。
「なぁ、なんで食わねぇの??美味ぇんだよ?ほらっほらっ」
蛮骨は夜目を凝らした。
前方にうずくまる黒っぽい姿。
それは、ケーキのかけらを手に、猫に話しかけている蛇骨だった。
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