2.「らしくもなく」

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  「珍しいね、大兄貴が店に来てくれるなんて」 「まぁ一度は覗いとこうと思ってな。落ち着いた良い店じゃねぇか」 蛮骨は珈琲をすすり、店内をゆっくり見回す。 「女の客さえ来なきゃな~」 捨て台詞めいた言葉を残し、蛇骨は奥に消えた。   蛮骨は口の端に笑みをのぼらせた。 昨日のむかつく野郎は来てないみてぇだな。 似たような髪しやがって。   蛮骨は蛇骨のバイトが終わるのを待ち、真っ直ぐ連れ帰るつもりだった。   だが。 バイトを終えた蛇骨から驚くべきことを聞かされた。 「何だっておめぇがそいつの店に行かなきゃならねーんだよ!」 「だからマスターの知り合いんとこの新作ケーキ試食会に誘われただけだって。常連さんがそこの息子だなんて知らなかったんだもん」 蛮骨に反対されるなんて心外だとばかりに、蛇骨はそっぽを向いた。 「そぅかよ。なら、おれも行くぜ」 「えぇ?!でも」 「なんだ、おれが行っちゃ具合悪いのかよ?」 きつい眼差しを受けて、やっと蛇骨は気付いた。 大兄貴、意固地になってるんだ。 何も答えず蛮骨に飛び付いた。 「おっと!」 「大兄貴、一緒に来てよ。そんでいっぱいいっぱいケーキ食おうぜ!!」   ちょっとの間が空いて。 蛇骨は背中に回る力強い腕を感じた。   そんならしくもない大兄貴も大好き。 嬉しくて、更にぎゅうぅっと浅黒い首筋にしがみついた。
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