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俺は俺についたあだ名というものが大嫌いだ。
俺は今、赤頭巾を被って、質素な淡いピンクのドレスに身を包んでいる。
さながらそれは、小さな少女が身を包むようなもので、俺のような、今年十七になった奴が、到底着るようなものではない。
まあ、何故俺がこれに身を包んでいるのかと言うと、話せば……
……長くはならないが、簡単に言えば両親の趣味だ。
俺の両親はともかく無類の可愛いもの好きで、俺がちょっと童顔で、体格が小さいことを理由にそんなものを着せているのだ。
全く、ホントに良い迷惑だ。俺が必死に嫌がっても両親は無理矢理着せ込んで、町に食材などを買いに行かせやがる。
そんで持って、付いたあだ名が『赤ずきんちゃん』だ。
もう町を歩くのも恥ずかしい。変な目で周りに見られるんだからな。
ホントに両親を恨む。赤ずきん“ちゃん”だと? 俺は男だっての。このあだ名が定着する前の俺を返してくれ。返せないなら、
いっそのこと、殺してくれ。
とにかく、俺はそんな最悪な衣装を着込み、道中、周りに小さな木々が点々と生えた草原を歩いていた。
というもの、この先には俺のおばあちゃんが一人で小屋に暮らしている。
町の離れにあるそこは老人が一人で暮らすにはちょっと厳しい気がするが、当のおばあちゃんは元気が有り余っている上に一人を好む性格なので、一人で暮らしている。
とは言っても、何もない草原の森の近くにある小屋なので、近くに食材屋があるわけでもなし、畑で何かを栽培しているわけでもないので、こうやって今、俺が食材を届けているのだ。
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