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それが結構また重労働で、背にリュック一杯のハムやら野菜やら、牛乳、チーズ、その他もろもろテンコ盛りだ。
故に、重い。正直おばあちゃん一人でこの量は食い切れないだろうと思うくらい重い。
だが、毎回おばあちゃん家に行く度にそれらの食材は綺麗に無くなっているのだから不思議だ。
どんな胃袋にあれだけの食材が入るのか、考えてわかるはずがない。
暫く歩きは、木陰で休み、おばあちゃんの顔を思い浮かべた。おばあちゃんの顔は穏和そうな優しい瞳をして、少し頬の掘りが深く、腰が曲がったおばあちゃんだった。
昔、俺が今よりずっと小さい頃に色々な話をしてくれたのを覚えている。
それは湖よりもっと大きな水溜まりの海というところで船というものを浮かべて旅をするものだったりとか、灰を被って苦しい生活を余儀なくされていた女性が一国の王子のお姫様になるとか、多種多様だった。
小さい頃の俺はそんな話を聞くのが大好きでおばあちゃん家に行く度に話をしてもらっていた。
まぁ、実はと言うと、今も聞いているのだが、今聞いている話がこれだ。
【――――――】という題名で、一人の少女がとある一匹の狼に恋をするというものだ。
狼も少女のその愛に応えて、少女を愛するのだが、その障害は険しく、人間や他の狼から蔑まれ、罵られるという、大きな壁が彼女達を遮った。だが、彼女達はそれを乗り越えようと奮闘していくのだ。というところでおばあちゃんの話は終わっていた。
俺が続きを急かそうとするとおばあちゃんは続きを言う代わりにおばあちゃんの家のすぐ傍にある森の言い伝えを話してくれた。
“知の人、猛き獣、其等が交わる時、獣を取り巻く畜をなかば消さん。されば人は畜になかば取り巻かれん”
俺にはこの言葉の意味がさっぱりわからない。それがこの話とどう関係があるのか、やはりわからない。
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