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今朝のように妖さんの指が俺に触れると視界が薄青い炎で満たされる。
「……少ししたら、治りますよ」
曖昧に歪んだ俺の視界の中、妖さんは一瞬だけニッコリと笑いかけてくれたような気がした。
ボンヤリとした意識の中、妖さんはゆっくりと立ち上がる。
まるで、俺の隣に降臨している鳴と、対峙するように。
「……霞ヶ浦 鳴さん、これは、酷過ぎます」
怒気。
それがハッキリと伝わるような、声。
決して荒げてはいない口調。
それでも、今までに聞いたことがないような、そして、それが肌で解るほどの怒声だった。
「な、何いってんのよ雨羽美さん! だって今、コイツは――」
「恢くんを、コイツ呼ばわりしないで下さい」
初めて、妖さんが躊躇わずに会話をし、そして他人の話を遮った。
狼狽しているのかなんなのか、鳴は妖さんの言葉を聞いて開きかけていた口を閉じる。
すると、全身からパチパチと、そして時間が経過する都度にバチバチと、俺にとっては聞き慣れた音を教室中に響かせた。
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