夢うつつ

2/4
前へ
/70ページ
次へ
『手前ぇ、実のところ Sだろう。』 着物を着流し、左目を 包帯でおおうという ふざけた格好をしたやつは、私を見るなり、ふざけたことをぬかした。 『馬鹿杉』 私はいたって真面目に 彼の名前を呼んだ。 『高杉、だ。』 彼は不満げに眉をよせ、 律儀に間違えを諭す が。 知ったこっちゃないので、それを流す。 『そんなことはどうでもいい。』 『手前ぇは、人の名前を おちょくっておきながら、どうでもいいと吐き捨てんのか?』 …ホンと、どーでもいーのでやはりスルーする。 『お前はここで何呑気に 酒をあおっているんだ?』 彼は結構名のしれた、 過激尊皇派で、目下指名手配中の男である。 馬鹿なのに。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加