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『手前ぇ、実のところ
Sだろう。』
着物を着流し、左目を
包帯でおおうという
ふざけた格好をしたやつは、私を見るなり、ふざけたことをぬかした。
『馬鹿杉』
私はいたって真面目に
彼の名前を呼んだ。
『高杉、だ。』
彼は不満げに眉をよせ、
律儀に間違えを諭す
が。
知ったこっちゃないので、それを流す。
『そんなことはどうでもいい。』
『手前ぇは、人の名前を
おちょくっておきながら、どうでもいいと吐き捨てんのか?』
…ホンと、どーでもいーのでやはりスルーする。
『お前はここで何呑気に
酒をあおっているんだ?』
彼は結構名のしれた、
過激尊皇派で、目下指名手配中の男である。
馬鹿なのに。
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