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いてぇ。
見たくねぇ
苦しい。
会う度に強くなる。
触れる勇気もねぇくせに
会いたがるから。
『私は都合のいい…切り捨てたいときに切り捨てられるお前の駒なのか?』
ほどいた腕がまた、
襟をとらえる。
細い腕が震えて。
『ふざけんじゃねぇぞ』
こちらとて、
一度もお前を
駒なんざ思ったことはねぇよ。
お前が女の身でありながら新撰組に席をおく理由も、俺が会いにくる度苦しんでいることも、全部…
知ってるつもりだ。
『私は新撰組であることに誇りをもってる。…貴様を斬る覚悟もとうの昔につけた』
一言一言漏らすごとに
語調は強くなる。
好いた女を
苦しめているってことは
分かってんだ。
『死ぬ覚悟はできてる』
それでも…
それでも。
お前との時間は
失いたくないんだよ。
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