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それから数十分程歩き続けると開けた芝生の公園に出た。
そこで、ロキは足を止める。
「ここが目的地?」
「いや、取りあえず開けた場所に出たかっただけ」
ロキの言葉に少年は思わず体勢を崩した。
「それだけの理由で…………」
「カワイイカワイイ息子を呼ぶにはあそこじゃあ狭すぎるからね。ロキ君の七つ道具[呼び寄せホイッスルtype1]」
パチンと指を鳴らすと共にロキの手元に出てきたのは、シンプルなデザインの小さな銀色の笛。
「さあ、来い。我が息子よ」
そう言って、息を吸い込むとロキは一気に笛に空気を流し込んだ。
しかし、音はまるでしない。
「…………壊れてるの?」
音が鳴らないと言う拍子抜けな事に少年はロキに尋ねる。
「いや、キミには聞こえなかっただけ。…………ほら、来た」
その言葉と共に少し地面が揺れる。
少年は軽い地震かなと思い気にしなかったが揺れは次第に大きくなって行く。
そして、急に揺れが収まったかと思うと。
「っ!!?」
ロキと少年の真上を大きく飛び越し、巨大な黒い何かが目の前で着地する。
それは、見る者を威圧させる漆黒の狼だった。
「ま、またあの化け物?」
「失敬な、ボクのカワイイ息子に何を言う」
その言葉に少年は再び驚かされる。
華奢な少女に巨大な狼、規格違いもいいとこだ。
『父さん、何の用だい?』
低く響くような声でその狼はロキに言った。
「いつもどおりだよフェンリル。この少年の匂いを辿って欲しいんだ」
そう言って、ロキは少年の肩を叩き少年は思わず驚いた。
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