とある少年と白銀の邪神

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「ヨッと」 そう言うとチュールは雑居ビル三階分程の高さのフェンリルの背中から飛び降りる。 そして、軽やかに着地するとそのまま少年の方に近付いた。 「ちょっとガマンしてね」 「?」 ウインクと共にチュールは腰に下げている首輪の束を全て外し、それを天高く放り投げる。 その意図が分からず少年は首を傾げた。 「おいで、ガルフリオン二十二世、ポチラニアン、ロッキード・アクシデント……(以下省略)」 長い長い名前が五十近くも並べられ、ようやく言い終わると高く投げ上げられた首輪がようやく落ちてきた。 そして、首輪が光ると落ちてきた首輪を付けた犬達が立っていた。 「このコの匂いを辿ってね」 そう言って、チュールが少年を指差す。 その言葉に少年はイヤな予感がして、一歩たじろぐ。 すると、予想通り少年の匂いを記憶する為に犬達が少年に飛びかかり押し倒された。 「うわぁぁぁっ」 一瞬、自分の状態が分からなくなったがそれもものの数秒で終わり、直ぐに犬達は町中へと散って行った。 「さて、後は待つだけ」 そう言って、チュールは散って行った犬達を見届けていた。 「…………ねぇ、なんでチュールさんは毛がついて無いの?」 少しグッタリしながら、服が犬の毛だらけになった少年が起き上がる。 「ん?毛に触りたく無いと思えば勝手に取れるよ」 チュールの言葉に少年はガックリとする。 「それが出来るのは神様だけでしょ…………」 そう呟きながら少年は上着を脱ぎ、大量にひっついた毛をはたき落とした。
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