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漆黒の世界の中、一人の少年が目をさました。
上半身を起こし、辺りを見回す。
すると、漆黒の世界にまるで合わない気の抜けたデザインの旗をなびかせ、黒を中心にしたモノクロ調の服にシルクハットを被った自分よりも幼い感じの銀髪の少年がいた。
旗には目が痛くなるような配色の文字で、一名様ご案内と書かれている。
ふと、旗から目を離すとその少年と銀髪の彼の目が合う。
すると、シルクハットを下ろし礼儀正しくペコリと一礼する。
「初めまして。今宵、貴方様をアスガルドへ導かせて頂くロキと申します。貴方のお名前は?」
その言葉を聞いて、少年はポリポリと頭を掻く。
「…………わからない」
突然にバンッという音が鳴り、少年はビクリと驚く。
銀髪の少年が手に持っていたシルクハットを叩き付けたのだ。
「あぁーーーーっ!!ヘムっ、話が違うじゃないか。一番厄介なタイプだぞコレ」
そう叫び、じたんだを踏む。
その様子は先程の礼儀正しさの微塵も無く、まるでわがままな子供だ。
そのギャップに少年は更に驚いた。
まだロキはヒステリックな雄叫びを上げている。
「あの……僕はどうしたら……」
少年がおずおずと手を上げるとようやく落ち着いたのか、ロキは少年の方を見る。
そして、落ちていたシルクハットを被り直すと溜め息を一つ。
「わかった、全部話すよ。少年A、心して聞くこと」
蒼い双眼で、真直ぐに少年を見つめて言った。
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